第二の人生、気ままに生きる

60歳で退職しました。その後の自由な人生を記録と周辺のおもしろ情報など

アニメ『君たちはどう生きるか』は、なぜ難解と言われるのか?

Amazonのアソシエイトとして″第二の人生、気ままに生きる"は適格販売により収入を得ています」

1 『君たちはどう生きるか』とは

 2023年7月に公開されたスタジオジブリ政策のアニメ映画。

 英語名は、『The Boy and Heron』(少年とサギ)

 宮崎駿の監督・脚本であり、公開当時は宣伝をせず密かに映画館で上映された。

 面白い、最高傑作という声と、難解で意味が分からないという評価が多い。

2 観賞した印象

 テレビの「金曜ロードショウ」で放送され、難解であるという評価を耳にしていたので、心して鑑賞した。

 特に難解であるとは感じず、いろいろな過去作のオマージュなどがちりばめられており、宮崎監督の遺言映画だと言う人もいるのも肯けた。

 自伝的意味合いも強く感じ、それを踏まえて鑑賞するのも楽しそうだと思った。

3 なぜ、難解か

 わたしは難解だとは思わなかったが、巷で「難解である」という噂があるのはなぜか考察してみた。

(1)題名の答えが出ていない問題

 題名「君たちはどう生きるか」と問いかけていながら、どう生きるべきか答えをだしていない。題名から素直に、どう生きるか道しるべを示してくれる映画だと期待してみた人には、結局、どう生きればいいの? という疑問が残ったのだろう。

 しかし、この題名、英語版では『The Boy and Heron』(少年とサギ)としており、その答えを重視していないのだ。なぜか。

 これは、日本人に対しての問いであり、そして、答えは作品の中にはない。作品の中にあるのは自伝的部分、つまり、「俺はこう生きた」ということだ。

「俺はこう生きた、君たちはどう生きる?」

 と、監督が問うているのだ。

(2)王道ファンタジーは難解である問題

 この作品の構成は、へんな動物に誘われて異世界にもぐりこんでしまうファンタジー作品の王道である。ジョージ・マクドナルドの『リリス』やルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』が有名である。

 これらの作品は、人気があるものの、難解であるという評がつきものなのだ。子供たちには素直に受け入れられるのに大人には難解なのはなぜであろう。大人は不可思議な出来事が起こるとその理由を考えてしまうからではないだろうか。

 子供たちは、不思議な出来事は不思議な出来事として素直に不思議がり面白がるのだ。手品を見て、タネをみつけようとしたりするのは後にして、まずは素直な感性で作品を見ることをお勧めしたい。

(3)自伝的作品なのにファンタジーな問題

 自伝的作品であり、主人公は時代背景からして監督自身であると考えられる。

 それをファンタジーに織り交ぜているため、分かりにくくなっている。監督の身の回りのことについて、予備知識がないと十分に伝わらないことも多い。

 主人公の父親は、監督の父親と同じ職業であり性格もいっしょだという。アニメの親キャラクターとしては紋切り型ではなく、あまりにも生々しい性格と行動で面喰った視聴者も多いだろう。

 母親のどこかボヤっとしたイメージは、監督の母は病床にいたため、ほとんど母親らしいことをしていないことに起因していると考えらえる。この母親も紋切り型ではなく、監督の母親像として一般の家庭とは違う生活感のないキャラクターとなっているところも視聴者に違和感を抱かせる原因であろう。

 この両親に対しては、わたしも視聴時に推測の域を出なかったので、この記事を書くために調べてみた。

 そして、アオサギであるが、これは高畑勲であろう。アニメ界に誘われ、その下で働き、技術を盗んで、肩を並べるまでになり、ケンカをしたり、二人でスタジオジブリを作り経営し人生の友となる。

 金銭を度外視し作りたいものを妥協せず作る芸術肌の高畑勲と、経営や採算を考え妥協を許してしまう宮崎監督。それを自分は純粋ではなく悪が混じっていると悔やみながら生きているのが宮崎監督の生き方である。こういう裏事情も知っているとより楽しめる内容となるだろう。

 しかし、これらのことを知らなくとも、アニメ作品だからと言うことで、紋切り型以外のキャラクターが難解と感じるのは、子供のような純粋な鑑賞眼を使って見なかったのではと思うのだ。

4 おわりに

 当然のことであるが、「難解である」という批評を否定するつもりはないし、別のところが主因であることも十分予想できる。また、わたしの感想が唯一無二の正解だとも思っていない。作品の感想・批評の違いは、見る角度や経験・立場などでまったく別のものになることは当たり前である。

 わたしはこう考えて楽しんでみた程度の軽い気持ちで読んでもらえたら幸いである。

君たちはどう生きるか [DVD]