1983年に映画化され、カンヌ映画賞パルムドールに輝いたとき、二十歳そこそこだった私は、予告編を見てビビッてしまい(映画も見ず)読まず嫌いしていました。
還暦を過ぎて精神も強くなったので、読んでみました。
静かな信州の山奥の村は食料が少なく、一人生まれれば一人死なねばならない状態でした。
七十歳になると山へ行く掟があり、主人公の母は、その日に備え準備を怠りませんでした。
対比として、同じ歳の近隣の家のじいさまは山へ行きたくないと抵抗するのです。
雪が降る前に山へ入るとき、主人公の母は背負われて山の中に静かに入っていきます。
主人公は帰りに、近隣のじいさまが縄でぐるぐる巻きにされ、崖から捨てられるのを見るのです。
生き残るための厳しい掟に支配された村で、それを受け入れ生きていく人たちの覚悟と葛藤の物語でした。
他に何本かの短編も載っていますが、表題作「楢山節考」とは雰囲気も内容も違い、同じ作者とは思えないほど多様な作品群でした。
ラストに載っていた「白鳥の死」では、「楢山節考」の主人公の母は、イエスと釈迦を合わせた精神の持ち主として書かれたことが告白されていました。
