
江戸時代末期、初めての航海で、わずか十三歳で難破し、アメリカ船に救助された彦蔵の生涯とともに、彼と関わった漂流民たちの顛末を追う展開となります。
日本における鎖国政策や攘夷運動、明治維新の開国、そしてアメリカにおける南北戦争と彦蔵の歩く道には、政変の嵐が吹き荒れているようでした。
彦蔵はリンカーンをはじめ、アメリカ大統領三代に会い言葉を交わすという類まれな経験をしながら、洗礼を受けアメリカに帰化しながらも、故郷に帰ることをあきらめませんでした。
そして、ついに故郷に帰ることが出来たのですが、その姿は、思い出とは似ても似つかぬ姿だったのです。
吉村昭にして、この調査は、もっとも困難だったと言うほど、多くの漂流民の行く末を調べ上げて記しています。帰国が叶わず異国の地で不運に亡くなった者、異国で家族を持ち裕福に暮らしている者、異国に帰化し働いている者、不可能と思われた帰国を果たして日本で生計を建てている者など、時代と運命に翻弄されてる姿は、漂流民のそれとかさなるものでした。
吉村昭の漂流ものや、幕末ものを読んでいると、他の小説の主人公などがちょこちょこ登場し、別の角度から、それらの人物を見ることが出来るのが面白いところです。
