
個性的なキャラクターを書ける作家は星の数ほどいますが、恒川 光太郎は、個性的な場所を書く作家です。彼の小説は、文章の中で独特の土地を作り出し、それを中心に物語が展開します。この小説では「穏(おん)」と呼ばれる土地から、物語が始まります。
彼が作り出す場所は、夢の中の知らない土地のように、行ったことがあるようで、少し変な実際にはない土地です。
穏は、日本のどこかの集落のようでいて、日本とつながっているのですが、地図には無く、実際の出入りは、かなりの労力がいるようです。荒野の中を数日かけてやっと出入りできるし、その荒野には食べ物や飲み水も乏しく、得体のしれない危険な野獣も生息しています。
そんな中で、殺人の嫌疑をかけられた孤児の少年が一人で日本への脱出をめざし、また、日本で継母から虐待され殺されかけた少女は穏を目指します。
この二人が交わった時、彼らの運命があかされるのです。
この人の小説を読むと、夢の中で知らないところに行って旅行気分を味わった後のような得をした気分になれるので好きなのです。